世界一の経済大国アメリカではどのような経緯でピザが広く一般に食べられるようになったのでしょうか。本記事ではアメリカならではのピザに加え、アメリカとピザの関係について紹介します。
アメリカにおけるピザの歴史
アメリカでピザが親しまれるようになった最初のきっかけは、19世紀のイタリアからの移民です。イタリアからの移民の多くは19世紀末にアメリカに渡りました。折しもイタリアではストリートフードとして庶民に親しまれていたピザが、王妃マルゲリータに供され広く一般にピザが食べられるようになった頃です。イタリアとピザの関係について詳しくは本サイトの記事「ピザとイタリア」も読んでみてください。
イタリアからアメリカに渡ったピザは、当初主にイタリア移民やその子孫達が好んで食べるものでしが、時代と共に、ストリートフードとして路上で移動販売され、その後カフェなどでも提供されるようになりました。アメリカ初のピザレストランについては諸説ありますが、専門店がオープンするようになったのは20世紀初頭に入ってからのことです。
第二次世界大戦を経て、ピザがイタリア移民やその子孫以外にも普及しました。第二次世界大戦でアメリカは連合軍の一国として、敵対する枢軸軍の一国であったイタリアと戦いました。イタリア戦線を戦った兵士は現地でイタリアの味にふれ、アメリカに帰還後、ピザが広くアメリカ人にも食べられるようになるきっかけとなりました。
ピザがアメリカ人にも食べられるようになると、ピザのレストランチェーンや宅配チェーンが生まれ、スーパーマーケットでは冷凍ピザが売られるようになり、アメリカの国民食のひとつといってよいほどピザは一般に親しまれるようになりました。(1*)
アメリカで爆発的に広まり人気を集めたピザは、伝統的なイタリアのピザから独自の進化を遂げました。日本でピザというと、肉加工品やチーズなどがたっぷりのったボリューム満点のピザをまず想像する人が多いことでしょう。これはアメリカのピザのまさに典型で、アメリカの影響を大きく受けて日本にピザが入ってきたためです。
続いてアメリカのピザについて見てみましょう。
アメリカで生まれたピザ
アメリカではピザがイタリアから入ってきて以来、無数のピザが生まれていますが、中には名前がついているものもあります。シカゴで生まれたシカゴピザがその典型です。シカゴピザが生まれたのは、広くアメリカでピザが食べ始められるようになる前の1943年のことでした。(2*) シカゴピザは、ディープディッシュと呼ばれる深皿に敷いた生地に、なみなみとソースとチーズを入れて焼くキッシュのようなピザです。テーブルでピザにナイフを入れると、ダイナミックにトッピングが流れ出る様子はソーシャルメディア映えすることから、近年日本でも人気の一皿となりつつあります。
シカゴピザと同じくアメリカの都市の名前がついたピザとして、デトロイトピザがあります。デトロイトというと、かつて栄えた車産業を思い浮かべる人も少なくないでしょう。デトロイトピザは、工場で使用するために作られた四角い型を焼き型として使用して、厚めの生地に肉加工品やチーズなどアメリカならではの具材をトッピングして焼き上げます。
シカゴピザもデトロイトピザもボリュームのあるいわゆるアメリカのピザですが、アメリカでピザが最初に食べられ始めた土地のひとつニューヨークでは、薄い生地にトマトソースとモッツァレラチーズだけをトッピングしたマルゲリータのようなピザがニューヨークピザとして愛されています。薄くて大きいピザは半分に折って食べるのがニューヨークスタイルのようです。(3*)
国土の広いアメリカにはシカゴピザ、デトロイトピザ、ニューヨークピザのように土地の名前のついたその土地ごとのピザがあります。アメリカのピザというと、ボリューム満点のピザというイメージを持ちがちですが、土地ごとの多様性に富んだピザを歴史とともに味わうこともできるのです。
アメリカで人気のピザ
シンプルで素材の味を楽しむイタリアの伝統的なピザもレストランでは人気がありますが、アメリカで人気のピザは、チーズや肉加工品をたっぷりのせたボリュームのあるピザです。ここにメキシコの唐辛子、タバスコペッパーを使ったペッパーソースをかけて食べるのもアメリカで人気のピザの食べ方です。
一方で、世界的な環境や動物の権利を意識する流れと相まって、ビーガンやベジタリアンのピザも若者を中心に食べられるようになってきています。本来イタリアのシンプルなピザは生地の上にトマトソースとチーズをトッピングしたもので、肉や魚に由来するトッピングをしなければ、ベジタリアンの人とも一緒に楽しみやすい食事です。肉や魚だけでなく乳製品もとらない人も少なくなく、近年ではビーガンチーズと呼ばれる植物性のチーズを使ったピザも見られるようになりました。
アメリカのピザを楽しむには
ピザ好きの中には、ピザといえばアメリカのピザで、ボリューム満点でなければ食べた気がしないという人もいることでしょう。ピザと一口に言っても、トッピングや生地の種類によってカロリーや栄養バランスはさまざまです。栄養素やカロリーに関する情報をまとめたウェブサイトSlismによると、シンプルなピザの代表格であるマルゲリータは1枚181.8gが565キロカロリー(*4)で、通常のピザ1枚501gが872キロカロリー(*5)です。通常のピザの直径は20cmとあり、アメリカのピザはこれより大きく、トッピングも多くなる可能性があることから、カロリーだけ見てもアメリカのピザはかなりのボリュームになるでしょう。
とはいえ、アメリカのピザを楽しむにあたって、カロリーや塩分を抑えることは簡単ではありません。健康や宗教上の理由で食事制限がない人であれば、アメリカのピザを楽しみたい日に他の食事を控えめにして、思いっきりボリューム満点のピザを楽しむのも一つの手です。
ピザと健康については、本サイトの記事「ピザと健康 」も参考にしてください。事前にカロリーや栄養バランスについて知っておくことで、アメリカのピザを食べる前後での調整がしやすくなるはずです。
まとめ
本記事ではアメリカとピザの関係について紹介しました。アメリカのピザというとボリュームのあるピザをイメージしますが、その背景には興味深い歴史や、土地の特色を反映したピザがあります。ぜひアメリカのピザを食べる時に本記事の内容を思い出して、アメリカのピザをより一層味わってください。
1* : History of Pizza 参照
2* : The deep rooted history of Chicago’s deep-dish pizza 参照
3* : ニューヨークピザを100倍楽しむ方法&おすすめ3店(アメリカ・ニューヨーク)