イタリア料理の定番として日本にも根付いて久しいピザですが、日本とピザにはどのような関係があるのでしょうか。本記事では日本とピザの関係について、歴史や日本で人気のピザを交えながら紹介します。
日本におけるピザの歴史
ピザはイタリア料理のひとつとして知られていますが、日本には主にアメリカを経てピザが入ってきました。その経緯と現在にいたるまでの歴史をみてみましょう。
15世紀末にイタリアのジェノヴァ出身のコロンブスがアメリカに到達し、植民地時代にアメリカに移ったイタリア人もいましたが、イタリア移民の多くは19世紀の終わり以降に渡米しました。(1*) 19世紀と聞いてすでにピンときた人もいるかもしれません。19世紀といえば、イタリアでトマトが食べられるようになり、かの有名なピザマルゲリータが考案された時期です。庶民のストリートフードとして食べられていたピザが王妃に供され、イタリアを代表する料理として一歩を歩み始めました。イタリアとピザの関係について詳しくは本サイトの記事「ピザとイタリア」あわせても読んでみてください。
主食と副菜がひとつにまとまってカジュアルに食べられ、さらに多くの人に愛される味とあれば、イタリアからの移民がアメリカにピザを持ち込まないわけがありません。20世紀に入るとアメリカで初めてのピザレストランが開業し(2*)、イタリア系アメリカ人からアメリカ人へとピザが広まっていきました。ピザはアメリカで独自の進化を遂げ、本家のイタリアとは異なり、厚めの生地に肉加工品を中心としたトッピングとチーズをたっぷりのせたボリュームのあるピザが一般的になりました。
第二次世界大戦中、日本はドイツとイタリアと緊密な関係にあり、戦中や大戦直後にイタリア人がレストランをオープンしたこともありました。ただ、広く一般にピザが食べられるようになったのには、戦後日本が関係を深めたアメリカの影響が大きいです。アメリカから冷凍ピザが輸入され、宅配チェーンが展開され、日本発の宅配チェーンも生まれました。食の西欧化やバブル期のイタ飯ブーム(「イタリア飯」の略)も相まって、ピザは日本でもよく知られる人気の料理のひとつとなりました。
1994年にはピザ協議会(*3)が設立され、ピザに関する市場調査や普及活動を行なっています。また、2006年には、ピザの本場イタリアの真のナポリピザ協会(*4)が日本支部を開設しました。真のナポリピザ協会は政府公認の非営利組織で、ピザやその材料、職人の技術を保護することを目的としています。日本ではレストランや職人の認定、トレーニングといった活動を行っています。
日本のピザ
日本では特に宅配ピザを中心としてアメリカ風のボリュームのあるピザが主流です。アメリカでイタリアのシンプルなピザが独自の進化を遂げたように、日本ならではのピザや日本料理をトッピングしたピザも生まれました。日本人は既存のものをアレンジするのが得意だといわれますが、ピザと同じくイタリア料理のパスタをアレンジして、今や日本のパスタの定番となったタラコパスタを作ったように、この傾向はピザにも見られます。
日本のピザの代名詞として、照り焼きチキンのピザがあります。海外でも「TERIYAKI」(テリヤキ)という言葉が使われるほど、日本の照り焼きは世界中で愛されています。照り焼きチキンをトッピングしたピザについては、日本発祥かは定かではありませんが、日本食材がトッピングされたピザであることから、日本のピザといってよいでしょう。
日本独自の傾向として、牛肉を使ったピザも見られます。また、マヨネーズを多用するのも日本特有といえそうです。日本にいると特に意識することはありませんが、日本のマヨネーズは世界で高い評価を受けています。そのほか、月見ピザといった日本の季節やイベントに合わせたピザも提供されています。
また、欧米と比べてピザは特別な日に食べるものというイメージのある日本では、せっかくピザを食べるのだからいろいろなトッピングや味を楽しもうとハーフアンドハーフよりも細かく四分の一に区切ってトッピングしたピザも見られます。
日本で人気のピザ
アメリカからピザが入ってきたという経緯から、日本ではアメリカ風のボリュームのあるピザが人気のようです。アメリカ風のピザのほか、前出の照り焼きチキンのピザも定番です。テリヤキチキンのような甘辛の味とピザの絶妙な組み合わせでは、韓国の牛肉を使った料理プルコギをトッピングしたピザも宅配ピザでは定番です。
ソーシャルメディアで映えるピザも人気があります。美しいピザは多数ありますが、ダイナミックさとエンターテインメント性のあるシカゴピザはソーシャルメディアで映えるピザの代表格です。シカゴピザは深さが数センチあるディープディッシュと呼ばれる深皿に敷いた生地に、ソースやチーズをなみなみと入れて焼き上げたピザです。テーブルでピザを切った時にソースやチーズが流れ出す様子が圧巻で、その様子がソーシャルメディアでシェアされ、話題を呼んでいます。シカゴピザについて詳しくは本サイトの記事「シカゴピザ」も読んでみてください。
ここまでアメリカとアジアのピザを紹介しましたが、イタリア料理のレストランやピザレストランでは、イタリアの伝統的なピザも楽しまれています。ボリュームのあるピザやアレンジピザとは異なり、イタリアのシンプルでありながら素材を楽しむマルゲリータのようなピザが楽しまれています。
日本ではピザは宅配サービスに頼むもの、レストランで食べるものというイメージがあります。これは欧米と比べてピザを焼ける十分な大きさのオーブンがある家庭が少なかったり、オーブンを使って料理をする習慣があまりないことによると考えられます。それでも自分でピザを焼きたいというニーズがあり、餃子の皮を使ったピザ、フライパンで焼くピザなど独特の焼き方でピザが作られています。これらに加えてオーブントースターで手軽に焼けて朝食にもなるピザトーストにも人気があります。餃子の皮を使ったピザ、フライパンを使って焼くピザについては本サイトの記事「餃子の皮でピザ」「フライパンで焼くピザ 」も参考にしてください。
まとめ
本記事では、日本とピザの関係について紹介しました。アメリカを経由して日本に入ってきたピザは、イタリアのピザをアレンジしたアメリカのテイストを残しつつ、日本人の味覚に合う形で形を変えてきました。本記事をきっかけにぜひ日本のピザを楽しんでください。
1* : 「イタリア系アメリカ人」参照
2* : 「日本におけるピザ」参照