ピザというと自分で作れても、時間はかかるし、本格的なものはレストランで、すぐに食べたい時にはデリバリーで頼むものというイメージを持っている人も多いかもしれません。でも、作り方によっては仕事のある日にプロ顔負けのおいしいピザを自宅で作ることも。本記事では簡単に作れるピザ生地からプロ級のピザ生地まで、おいしいピザ生地を家庭で作る方法を紹介します。
ピザ生地作りの概要
現在一般的に知られているパン生地の上にトマトソースを塗ってトッピングをのせたタイプのピザは、今から200年から250年ほど前にイタリアのナポリで生まれたといわれています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%82%B6
ナポリには、ナポリスタイルのピザを世界に広め、同時に守ることを目的とした非営利団体「真のナポリピッツァ協会」があります。真のナポリピッツァ協会のウェブサイトでは、ナポリピザの規制や定義を説明したページで、ナポリスタイルのピザの作り方を紹介しています。水、塩、イースト、小麦粉をこねて生地を作り、寝かせたのち、円形に成形し、トッピングをのせて高温のオーブンで素早く焼くというのがピザ作りのプロセスの概要です。
AVPN International Regulations (国際規制 – 真のナポリピッツァ協会)
続いてピザ生地の道具、材料、発酵、成形、焼き方の順で説明します。
ピザ生地作りに必要な道具
オーブントースターやフライパンで焼く簡単なピザもありますが、本格的にピザを焼くにはオーブンがあるとよいでしょう。本場のレシピでは400度を超えるプロ仕様のオーブンや石窯で焼きますが、家庭用オーブンでは最高温度で焼くことになり250度はほしいところです。
オーブンの他には特別な道具は必要なく、材料を混ぜて生地を寝かせるボウルかそれに代わる食器、はかり(軽量カップとスプーン)、生地をのばす麺棒(ビールやワインのボトル)、手軽に生地をこねたい場合ニーダーなど、キッチンにあるもので生地を作ることができます。
ピザ生地の材料
基本は水、塩、乾燥または生のイースト、小麦粉の4つです。小麦粉については、国や地域によって分類がさまざまで、日本のレシピでは強力粉と薄力粉を混ぜるものが多いようです。
基本の材料のほか、風味や焼きあがった生地の焼き上がりの色をよくするために卵を加えるもの、生地をしっとりさせるためにオリーブオイルを加えるもの、成形後に生地表面にコーンミールやセモリナ粉をちらしてバリッとした焼き上がりに仕上げるものなど、さまざまなレシピが存在します。まずは基本の材料のレシピに挑戦して、好みの材料をみつけていくことをおすすめします。
また、シンプルな作り方として、水、塩、小麦粉のみから生地を作る方法もあります。イーストが工業的に作られるようになる前のパン生地の製法のひとつで、水と小麦粉からサワー種と呼ばれるパン種を作って生地の発酵に利用します。サワー種の仕込みに数日、生地の発酵にも時間がかかるため、ある程度パン作りに慣れている人向けの方法ですが、腕に自身があるという方はチャレンジしてみるとよいでしょう。
ピザ1枚分のレシピ、海外レシピの場合、何人前になるのか迷うことがあります。そのようなときには、小麦粉100gから150gを1人前とみなして材料を調整するとよいでしょう。小麦粉100gで普段少食でも大食いでもない人がメインに、150gでお腹の空いた男性がメインにできます。
実は柔軟な発酵時間
ピザ生地をはじめとするパン生地には発酵時間が不可欠で、仕事や勉強など生地作り以外のスケジュールと調整しにくく面倒だととらえがちですが、実は発酵のプロセスは柔軟です。
発酵時間については、イーストをたくさん入れたり、温度の高い場所に生地を置いたりすると発酵がはやまり、逆にイースト少なめにしたり、温度の低い場所に生地をおいたりすると発酵は遅くなります。どちらも一長一短ですが、発酵時間を長くとると、生地に入れる小麦粉の風味がより深く感じられます。
今すぐ焼いて食べたいという場合には、ソースやトッピングを用意している間の短い時間を発酵時間にあてる時短ピザレシピも存在します。中にはベーキングパウダーでケーキのように生地をふくらませてしまうというものもあります。
発酵に数時間かかるとなると二の足を踏みがちですが、しっかり計画をして、数度挑戦してルーティーンにしてしまえば難いことではありません。発酵時間として1時間から2時間とるレシピが多く、普段家の外で働いている人は、休日に昼食や夕食の時間から逆算して生地を用意し始めるとよいでしょう。製菓製パン材料の老舗、富澤商店のレシピがシンプルかつ基本をおさえています。
そのほか、長時間低温で生地を仕込むレシピもあります。この製法ではイーストが少ないため短時間で発酵が進んでしまい過発酵になってしまうことがなく、数十分、数時間の差を気にする必要がありません。さらにゆっくり粉と水分を混ぜていくため、レシピによってはまったくこねないもの、こねたとしても数度折りたたむのみというものも。短いもので10時間、長いものでは数日生地を冷蔵庫で寝かせます。生地さえ寝かせてあれば時短レシピとほぼ変わらず、平日の夕食にピザを食べるのも不可能ではありません。
ピザ生地の成形
ピザ生地が発酵したらいよいよ成形です。成形にあたって気をつけたいのは、せっかく発酵したピザ生地を傷つけないことです。やさしく扱いつつ、適度に空気を抜いて成形しましょう。
一般的にピザは円形に生地を伸ばしますが、なかなかきれいな円にならないという人もいるかもしれません。おいしければそれでよしと円にこだわらないのも一案で、オーブンの天板を効率よく使うために四角く成形してもよいでしょう。
円形にこだわりたい場合、ピザ職人というと伸ばした生地をぐるぐるっと空中でまわしてきれいに丸く成形するイメージがありますが、実はレストランによってはピザトレー、ピザパンと呼ばれる金属の焼き皿を使っているお店もあります。生地をおよその円形に伸ばしたあと、焼き皿に移して形を整えれば手軽にきれいな円形に仕上げることができます。焼き皿は平たいので収納スペースをとらず、高価なものでもないので、頻繁にピザを焼く、丸い形にこだわりたいという人は購入を検討してもよいかもしれません。
また、成形が終わってトッピングをする前に、ピザ生地にフォークで穴を開けておくと、焼成時に不均一に気泡が膨らんでしまうのを防ぐことができます。大きく膨らんだ気泡には味があり、レストランではそのままトッピングをして焼いてしまうことがほとんどです。ただ、これは家庭用のオーブン以上の高温でごく短時間に焼きあげるため気泡が大きくなりにくいこととも関連しています。
焼き方
本場のピザは400度を超える高温でごく短時間で焼きあげますが、家庭用オーブンでは250度で15分ほどかけて焼くことになります。オーブンごとに癖や最高温度に違いがあり、レシピを参考にしつつ、自分のオーブンの最適な温度と焼き時間をみつけてください。
家庭用オーブンで本場の焼き具合を再現するコツがいくつかあります。最高温度に制限があるので、ピザを焼く天板はオーブンを予熱する際に一緒に余熱しておきましょう。高温の石窯の底を再現するためにベーキングストーンを使うという人もいます。ただし、天板もそうですが、ベーキングストーンは重量があるため、くれぐれも火傷には注意して扱うようにしましょう。
おわりに
本記事では家庭でも、忙しい人でも作れるピザ生地について紹介しました。作り続けるうちに好みの材料の組み合わせ、スケジュールと相性のいい発酵プロセス、オーブンにあった焼成方法がみつかるはずです。ベストなピザができたら、「プロ顔負けのピザ」と周囲に自慢したくなること請け合いです。